【炎上考察】夫が専業主夫になると、妻は嫌なのか?意外すぎる結論とは!

Xでの炎上を論文をもとに考察。意外な結果と、(個人的には)いや〜な論文結果が。。。
三木智有 2024.09.19
誰でも

こんばんは。家事シェア研究家の三木です。

さて、今日はXでの炎上ポストをピックアップして考察する「炎上考察」回です。
短い言葉でバシバシ相手を論破しようと躍起になる炎上ですが、炎上には加担せず外からそっと考察したいと思います。

今回の炎上はこちら。(ポストみたい人はスクショのリンクをどうぞ)

炎上テーマは「夫が専業主夫になったら妻は嫌なのか?」です。

この問題には2つの問題を考える必要がありそうです。

① ジェンダーバイアスの壁
② 収入の差によって男女の家事率はどう変わるか?

では、考察していきましょう!!!

▶ ① ジェンダーバイアスの壁は…ない!?

今回いろいろと調べていて以外だったのが、このジェンダーバイアスについてでした。

僕は、専業主夫に「なれる、なれない」という問題の前に「なりたい、なりたくない」の壁があると思っていました。仮説としては「専業主夫になることに抵抗がある男性はまだまだ多いのではないか」と考えていたのです。

ですが、調べていくとじつはそうでもないことがわかります。

※① 参照:株式会社SheepDog 2021年7月『(10代〜30代の男性向け)専業主夫願望に関するアンケート』

※① 参照:株式会社SheepDog 2021年7月『(10代〜30代の男性向け)専業主夫願望に関するアンケート』

約6割の男性(10〜30代)が専業主夫になりたいとのこと。

※③ 「ジェンダー別役割」に関するアンケート調査 タメニー

※③ 「ジェンダー別役割」に関するアンケート調査 タメニー

さらに、もし相手から望まれたら専業主夫になるか? という調査でも条件はそれぞれですが「条件なしでなる」という割合が41.7%もいるとの結果に。

では、女性の専業主婦願望はどうなのでしょうか。

※② 博報堂生活総研:生活定点

※② 博報堂生活総研:生活定点

専業主婦になりたい人は24.2%と少なめです。同様の調査は他にもありますが、おおよそ30%前後に収まるようです。

ここまで見て、まだ昭和バイアスにとらわれている僕は「いやいや、専業主夫の大変さを知らないから、働かなくて楽できるって思ってるだけでしょ!?」とうがった見方をしてしまいました。

でも、一概にそうとも言えないかもしれません。

「専業主夫、主婦になりたい」って、どういう人が思うのかを調べた調査(※③)があります。
この調査では3つの仮説を立てています。

仮説 1:最終学歴が高いほど、専業主婦願望、専業主夫願望が強い
仮説 2:子供の人数が多い人ほど、専業主婦願望、専業主夫願望が弱い
仮説 3:子供の世話時間が短い人ほど、専業主婦願望、専業主夫願望が強い

結果、最終学歴が高い女性ほど専業主婦願望が弱い、以外はあまり関係ないとの結果に。
つまり、子どもの世話時間が短くて専業主夫の現実を知らないから主夫になりたがるわけではないようです。

では、実際に専業主夫はどのくらいいるのでしょうか?

調査によれば、おおよそ1〜2%ほどが専業主夫になるようで(※④)割合としてはかなり少数派です。

この調査を見るかぎりでは「専業主夫になりたい男性は以外に多く、だけど実際になっている人はとても少ない」ということのようです。

◉ 女性は100年くらい妻がほしいと嘆き続けているのか?

Xでの短くてキツイ言葉は、相手に強い感情をぶつけるためのバイアスがたくさん含まれています。
きっと女性が100年くらい叫び続けていたのは「社会や家庭における男性と平等の権利」であって、それは働く権利や、正当に評価される権利、アンペイドワーク(無償労働)を女性だけに押し付けられない権利を求める戦いだったはずです。

けっして「妻」が欲しいわけじゃないだろうし、ここでいう「妻」が「無償の家政婦」という扱いになっていることに悲しさを感じます。

では、女性は「専業主夫」をパートナーに望んでいるのでしょうか?
これには面白い調査があります。

※⑤ ラララとらばーゆ総研~主夫について、どう思う?

※⑤ ラララとらばーゆ総研~主夫について、どう思う?

「いまの時代、主夫だってありだよね!」と肯定的な意見が大半をしめる一方で、「でも自分の夫が主婦になるのは反対」という意見がやはり7割ほどです。

これは、なんと言うかリアルだな〜と思います。
この調査を見てまっさきに思うのが「働いて家計を養うことの大変さ」だと思います。とくに、女性はまだまだ男性に比べて収入や地位を低くあてがわれがちなので、なおさら厳しいでしょう。

ですが、僕はちょっと違った事情もあるんじゃないかと考えています。
それは女性の方が自分が暮らしの軸であることを手放したくない人が多いのではないかということ。
つまり、日々の暮らしを大切に思っている人が、男性より女性の方が多いだろうと思うのです。

これには理由があって、こんな調査があります。

※⑥ 夫婦の家事・育児分担と妻の幸福度の関係―夫婦でどのように家事・育児を分担すると妻が最も幸せとなるのか―

※⑥ 夫婦の家事・育児分担と妻の幸福度の関係―夫婦でどのように家事・育児を分担すると妻が最も幸せとなるのか―

これは前回の記事でも紹介した「夫婦の家事育児分担は結局5:5が一番幸せ」を示した論文からの抜粋の図です。
今回着目するのは、グラフの左側。これは妻の家事育児分担割合が24%以下になると、妻の幸福度が低くなっていることを示しています。その幸福度は75%以上を担っているときと同じくらいにまで下がります。

もちろん専業主婦の場合は、自分が専業なのにほとんど夫にやってもらってる、となれば自己有用感が下がってしまうのは理解できます。ですが、共働きでもほとんど同じように幸福度が下がってしまうのです。

つまり、夫に家事育児を全振りしたら妻も幸せになるかというと、決してそうではないということ。

この結果の仮説として、僕は日々の暮らしを大切に思っているのは女性の方がが多いのではないかと考えています。

家事育児は大変なことだけど、それをすることで自分が生活をコントロールできているんだという認識も生まれるし、自己有用感も高まります。また、社会的なバイアスの影響も大きいと思いますが、女性の方が男性よりも家事育児をしないことへの罪悪感が大きい、ということもあるのでしょう。

▶ ② 収入の差によって男女の家事率はどう変わるか?

つぎに、夫は妻の収入によって家事の参加率が変わるのかどうかを見ていきます。

「妻の収入が高収入になっても夫は家事をしない」が本当なのかどうかです。

男性の家事分担率がどうやったら促進されるのかを調べた調査があります。(※⑦)
この調査による結論箇所をいくつか引用します。

① 女性が経済力をもって生活費の稼得に貢献することは,従来の性別分業的な家族(夫婦)から脱却するには非常に効果的である。

② 「あくまでも家庭優先で」「夫の扶養控除の範囲で」という程度の中途半端な就労では状況は変わらないことを示している。夫の行動,ひいては夫婦のあり方を変えたければ,夫と同等に職業役割を担う覚悟が必要である。

③ 夫の家事分担率を基準変数,子ども数と夫婦の労働時間,妻の経済力,家事省力化度,夫婦それぞれの家族に関する価値観(3 因子)を予測変数とした重回帰分析の結果,どちらの世代でも,夫・妻いずれの回答でも,妻の経済力が有意であった。妻の労働時間は育児期世代でのみ有意であり,中年期世代では妻が忙しいだけでは夫の家事参加は進まないことが見出された。

④ 妻の収入を「無収入」「低収入」「中収入」「高収入」の 4 群に分けて夫婦間のコミュニケーション態度の比較を行い,妻の収入が高い群ほど夫が妻に対して示す「共感」的な態度の得点が高いことを見出している。これは妻が独立の経済を持つ経済主体となることによって,「夫が妻を疎かにできない,対等に認めねばならないとの気持ちが強まる」ためと考察される。

読みにくいのでざっとまとめると。

① 女性が生活費を稼いで貢献すると、男性も家事するようになる
② でも、「扶養の範囲内」だと効果なし
③ 妻の「忙しさ」は育児期だと有効だけど、それ以降は夫にとってあまり関係ない。それより「いっぱい稼いでるかどうか」が大事
④ ちなみに、妻の収入が高いほど夫は妻を対等と思い共感する

…ということのようです。
なんか嫌だな〜。相手の収入でしか、助け合いする価値を判断できないって。
「いっぱい稼いでるなら、認めます!」って夫、そんなに一般的なのかな??

個人的には嫌な研究結果ではあるし、これが絶対に正しいとも思いませんが少なくとも「妻が高収入でも夫は絶望的に家事育児しない」ということではなさそうです。…むしろ高収入になるほど、家事育児をするようになるとのこと。

▶ 炎上への結論!

炎上ポストの主が叫びたい気持ちもわからないでもありません。
でも、主(おそらく女性)自身が「妻」や「専業主婦」をあきらかに夫に隷属する存在として軽視しているし、男性は絶対に家事育児しない生き物であると決めつけている感じがします。

そうした感情から生まれた言説が、あたかも真実かのように広まるのはいただけません。

一方、今回の調査で、僕自身もまだまだ昭和的なバイアスに囚われているんだなと思い知りました。
専業主夫になりたい男性がこんなに多いとは思わなかったし、よもや専業主婦になりたい女性よりも多いなんて想像もしていませんでした。

世の男性は「働くこと」に疲れ切ってしまっているのかもしれません。

でも働くことへのアンチテーゼとしての専業主夫だとしたら、ちょっと悲しい気もします。

家事育児はたしかに大変なことではありますが、だからこそある喜びや、文化、幸せ、充実感や楽しみだってあります。この家事育児のプラス面は、ワンオペで苦しくなるほど味わうゆとりもなくなってしまいます。

夫婦で助け合うことは、ただ家事育児を楽にするだけではありません。
そこにある楽しみや喜びを目一杯味わうためにも大切なことです。

ぜひ、夫婦で一緒に暮らしそのものを楽しみましょう!

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少しでも多くの読者さんに記事を届けられたらと思っていますので、ぜひよろしくお願いします(。>﹏<。)

***

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参考資料

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